不審者を見分けるレバー

ゴリラだったら死んでた

創造主わくわくさん

 わくわくさんが死んだ。

 ゴロリがその事実を知ったのは雨が強い夏の日だったそうだ。

 その翌日、ゴロリは一心不乱に何かをつくっていたそうだ。ゴロリは、何をつくっているのかと周囲の人々に聞かれたが彼は一切返事をしなかったという。

 それから毎日ゴロリはなにかをつくり続けていた。まだ完成しないのかとある人が聞いたらしい。だが、彼は一切返事をしなかったという。

 

わくわくさんの死から一周忌。この日も、あの日と同じく強い雨が降っていたという。そんな日にゴロリは遂に完成させた。

「やった!やったぞ!僕はあなたをつくったんだ!」

 狂ったように喜び、叫ぶゴロリ。そう、ゴロリがつくり続けてきたものは”わくわくさん”だったのだ。 

 「これから、前みたいにいっぱいつくって遊ぼうね...」

 涙ながらにわくわくさんに抱きつくゴロリ。

 「ゴロリ、僕はねもう、つくってあそぶのは飽きちゃったんだ。」

 「え?」

 笑顔のわくわくさんに、困惑しているゴロリ。

 「僕はねゴロリ、新世界を創りたいんだよ、僕が考えた理想の世界。」

 「そんな...そんな...!」

 「それでね、僕の理想の世界にゴロリはいないんだ。残念だけどね、ゴロリには消えてもらうよ」

 

 朝、いつものアラームで目を覚ます。食卓には既に娘が座っていて、妻は僕の味噌汁を注いでいるのだろう。扉を開けるとやはりその通りだった。

 「おはよう」

  僕がそういうと妻と娘も「おはよう」と返してくれる。

  テレビには『つくってあそぼう』が流れている。

 「ん?」

  妻がテレビに目をやりながらそう言った。

 「どうしたんだい?」と僕

 「いや、つくってあそぼうってわくわくさん1人だけだっけ?」

 妻は指で顎を擦りながらそう言う。

 「なに言っているんだ」

 

 「ずっと1人でやっていたじゃないか」